病理診断科

病理診断科

1 病理診断科紹介

ほとんどの疾患においては、その疾患がどのような種類の病気であるかをはっきりさせてから、有効な薬物や手術などが選択され、本格的治療が施されます。この病気の本態を突き止める事を、“診断”と呼びます。実際、診断は臨床医師が患者さんを診療しておおよその見当を付けますが、それを確定するのは実は種々の検査値(血液検査等)や画像解析などの所見を解析することや、その病巣から組織を採取し、それを顕微鏡を用いた細胞レベルで分析し、病態の原因を明らかにする病理診断等に任されているのです。

すなわち、病理診断科は他の臨床医のように患者さんの実際の診察には当たりませんが、患者さんのどの臓器組織のどの細胞が異常をきたしているのかを解明し、それを治療にあたる主治医にすばやく進言して治療に反映していただいております。詳細には次のような業務を行っております。

生検・手術材料の病理組織診断:Surgical diagnostic pathology

内視鏡や針などで微小な組織片を採取することを生検と言い、消化器内科、外科、乳腺外科、産婦人科、泌尿器科、形成外科、耳鼻科、皮膚科などで多く施行されます。こうして採取された生検組織をパラフィン包埋して顕微鏡標本を作製し顕微鏡下で観察・分析します。

一方、手術手段で病気の根治を期待する選択がなされた患者さんには、術中に病巣断端やリンパ節に悪性細胞が残っていないかを短時間で診断する迅速診断を行ったり、手術後摘出された臓器・組織からたくさんのパラフィン標本を作製し、病巣の異型度、広がりや脈管侵襲の有無、増殖細胞の生物学的性状などを顕微鏡下で詳細に検討し、病理組織診断報告書を発行します。

これまでは、伝統的にHE染色標本のみで病理組織診断することが多かったのですが、90%はそれで診断可能であっても残りの10%程はその原因細胞の性状を分析しないとどのような臓器や組織に由来したどのような細胞のであるか不明な難解症例であったり、良性・悪性が決めがたい境界病変であったりします。ですから当病理診断科では近年急速に開発されてきました免疫組織染色法を積極的に用いて、病気を引き起こしている細胞の起源、産生物質、増殖率、膜レセプターや癌抗原発現等を同定し、それらの所見を総合的に判断して最終病理診断を心がける努力をしております。

当病理診断科では、山形大学医学部病理診断学講座(二口 充教授)の指導の元、密接に連携し合い、時に遠隔での難解症例のご相談や迅速診断のご高診をあおぐことも多々あります。大学の若手病理専門医先生には週一日の非常勤をお願いしております。診断学のレベル維持と向上に努めております。

細胞診:Clinical cellular pathology

患者さんに苦痛を与えない方法で採取した遊離細胞のスタンプや塗沫標本等を顕鏡し、判定可能な細胞群に対して良~悪性クラス分類し、また、その異型細胞の性状や起源を推測することを細胞診と呼びます。検診などの子宮頸部粘膜擦過、自然尿、喀痰、胸水/腹水、乳汁分泌物等が主な対象となり、いわゆる病理の最前線で異型細胞の発見にあたります。

当診断科には現在、四名の細胞検査士が働いており、彼らは日夜ともに標本を検鏡し所見を協議しあい、さらに精密な病理検査(生検や手術)が必要な患者さんを正確に拾いあげて、さらに次のレベルの精密検査臨床現場に紹介しているのです。

病理解剖:Autopsy

どんなに医学が進んで診断が正確になっても、皆さん個人が互いに異なっているように、病態そのものも必ずしも同一ではなく、それ故に、病気の進行や抵抗性は種々に異なります。手術や投与薬効の効果が十分に得られず不幸な運命をたどらざるをえない患者さんもおられますが、その中で治療チームがどうしても理解できない転帰をとられたケースには、ご遺族の承諾を得て、病理的にご遺体を調べさせていただくことがあります。

これが病理解剖で、これにより治療チームはその疾患の全体像を初めて総合的に理解することが出来て、明日の現場にその分析結果を反映させることが可能となります。

最終の解剖診断結果はおよそ3か月後に遺族に伝えられます。またこれらの崇高な診断データは全国的に集計されて、将来の医療治療指針に役立てられます。病理解剖では院内で亡くなられた患者さんが対象で、法医解剖や司法解剖は病理診断科では行いません。

臨床病理検討会:Clinical pathological conference

すでに述べてきましたように現代になって次つぎにあたらしい概念の疾患が解明されてきており、また一方、どうしても的確な診断がつかない難解な疾患に遭遇することも少なくありません。そうした疾患症例を、院内/外の医師や看護師、薬剤師、細胞検査士、臨床検査技師等の医療スタッフが集まって検討・勉強する研修会を臨床病理検討会と言い、病理診断科が主にこれを企画します。

病院における医師の生涯・卒後研修の一つに挙げられ、年に数回が行われています。当院の臨床病理検討会は手術・生検症例と、剖検症例が共に50回を越えてきています。この臨床病理検討会は臨床研修医の必須科目の一つとなっておりますので、この研修会の重要性が理解できると思います。こうして、総合病院に常勤の病理専門医が働くことで時代に合った高レベルな医療を皆さんに提供できるのだと信じています。

2 臨床指標

病理診断科 過去5年間 標本件数の推移

組織診細胞診総ブロック数剖検
2018年20243571129642
2019年21553884125222
2020年21313478113822
2021年24673604149181
2022年21963443134882

術中迅速病理組織診断・免疫抗体法・術中迅速細胞診検査

術中迅速組織診免疫抗体法術中迅速細胞診
2018年563456
2019年4639911
2020年413794
2021年694120
2022年494034

3 新病院における病理診断科設計案

この度、米沢市立病院と三友堂病院とは新統合病院を2023年の秋にオープンする運びとなりました。
最近、改築・移転されました福島日赤赤十字病院と大原記念総合病院の病理診断科室を参考にさせていただきながら、新米沢市立病院における病理診断科の在り方やスペースデザインを検討してきました。

現在の病院では病理診断科は二階の臨床検査科部門内に設けられておりましたが、あらたな病院では臨床検査科から独立し、業務に関連の深い中央手術部門との連携を重視して同じ三階フロアーに隣接設置されることになりました。病理標本作製室、切出し室、検顕室等のフロアー面積がこれまでの病理診断科よりも広くなりますので、ますます多方面になる標本作製の各ステップに適切に対処できそうですし、病理医も臨床検査技師も効率良く診断業務に携われそうです。

臓器整理室は手術部門内に設けましたので手術にかかわる臨床医にも業務動線が良くなります。病理解剖室も同じフロアーにスペースを確保していただきましたので病理診断科からも、また病棟からもアクセス容易な位置に決まりそうです。
2023年11月に新しくなる病理診断科に、皆さん、どうぞご期待ください。

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